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桜の時期が終わるころに思い出す美しいできごと?

4月のこの時期になると、子供の頃から家族や親戚とみんなで遠足のごとく毎年出かけていった新宿御苑でのお花見や、学校の庭に咲いていた桜の木のことなど、いくつかのことが思い出されます。でもそれは、はるか昔の話で本当に桜が美しい、はかない、と思えたのは、今から確か12~13年前の30代前半。その頃の私は離婚して一人暮らしに戻っていたこともあり、仕事に熱中し自分のやりたいこと、または関わったものが形になり始め、ウキウキしながら毎日生活していた。そんな私が偶然にも日本の古いもの、和食器、食文化、旅館、絵、習字、香、盆栽に詳しい、また興味をもって勉強している男の方に出会った。

その時期の私には全く未知の世界。その彼の感性や、違う世界で生きている魅力にすっかりはまってしまい、会社が終わってから、今まで一度も行った事のなかったような、浅草の古い居酒屋さんや、神田のお蕎麦屋さん、日本橋のてんぷら屋さん、神楽坂の料亭、赤坂の古いバー、それに加えて、お休みに日は、美術館や、骨董品屋さんめぐりなど、本当にどこに行っても何を見ても新鮮で、刺激的、しかも何でも教えてくれる先生に憧れる女子高生?のごとく彼と一緒にお勉強、そんな楽しい時間を過ごしていた。知り合ってからちょうど3ヶ月が過ぎ、私の気持ちの中でも彼は特別な人に変わりかけていて、男と女としての付き合いが始まりそうな予感だった。そんな微妙な気持ちの頃、“桜の花が水墨画のように美しくて何時間見ていても飽きない所に連れて行く”と私を夜中に誘ってくれたのが千鳥ヶ淵北の丸公園の夜桜見物。それも、満開の時期ではなく、はらはらと散り始めた頃を見計らって。

彼の横で何も話さず、ただ2人黙って水面を見つめながら、ゆっくりとした時間に身を置き、このまま朝まで彼のそばにいることが出来たら、どんなに素適なことか…、と思っていると、いつのまにかうっすらとあたりが明るくなってきて、朝靄の中で桜はますます美しく私には見えました。そのうちに二人どちらからともなく歩き出し、無言で彼の車に。そして、いつもと変わらずに彼は、私を家まで送って帰っていきました。本当にいつもと同じように。

でもあの夜をあの日を境に、何故か彼は私との関係に距離を置くようになり、序々に逢う回数も少なくなり、私もいつもの生活に戻る努力を。
何がいけなかったのか、何故あの日がきっかけにになったのか分からないけれど、桜の時期になると思い出すとても苦い思い出。あれ以来、何だか怖くて千鳥ヶ淵にはまだ行けないのですが、今年あたり、もうそろそろ卒業してもいいのではと思っている私です。
皆さんは桜の時期どんな思い出をお持ちですか?

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