OLD midroom

雨の似合う人。

雨が降り続くと「何だか嫌な天気ですね。」と、いろいろな人が言うけれど、最近私は何故か、この雨の日が嫌いではないのです。その理由は多分、空気がひんやりしていてあまりにも静かに周りを包み込み、その中にいる自分までもがその静けさの中に溶け込んでいて、まるで違う世界にいるように感じられて気持ちが落ち着くから。

そして、そんな夜その雨にぬれた道をゆっくりゆっくり歩きながら、大きく深呼吸をしたりすると、体の中までもがひんやりして美しく変わっていくような気持ちになるのです。そういえば、いつだったか大好きだった彼とこんな雨の日に窓のたくさんあるお店で待ち合わせをしたことがありました。待つことが好きな私は、この日も約束の時間よりも10分ぐらい前にお店について、一人でぼーっとしながら彼の来るのを待っていました。窓の外はかなりの雨、大粒の雨が道をぬらしていました。そんな中、彼が来るのは大変だろうなー、傘は持っているのかなー、なんてことを一人で考えながら、窓の外を見ていました。すると、その大雨の中、黒いコートにジーンズ姿の彼が傘もささずに反対側から走ってくるのが見えました。その姿があまりにも、ダイナミックで美しくて私の目は彼に釘づけになり、心臓が高鳴ったのを覚えています。

この世の中で一番美しいと思える人が、私を求め、好きだと言ってくれて、後5分もすればいつもの笑顔で目の前に現れようとしている、その時の嬉しさと言ったらこの世の幸福を全て手に入れたようなそんな気持ち。そして、髪がぬれ、コートがぬれているのも気にせず、私に向かって、「また待たせたね」と言って席に着きました。あのときほど、雨が美しいと思ったことは、一度もありません。また、雨が好きだと感じた事もありません。そして彼以上に雨が似合う男の人を好きになったこともありません。あれは、確か今から20年ぐらい前の、素適な雨の日!

その後何年かして、私はサーファーの彼と恋をし何度も海から上がってくるズブ濡れ状態の彼を待ち、それは私の中であの時、あの雨の日の彼とダブりそれが理由でますます恋に落ちたことがあったなぁーなんて、昨日のことのように蘇ってきました。 そんなことを思い出しながら、雨の日が教えてくれたかけがえのない素敵な1ページだった…、と感じている自分がいます。
雨の日を待ち焦がれている、ちょっとロマンチックな私が。

皆さんは、雨の日は好きですか?

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